小学生の頃。僕は走るのが好きだった。短距離限定だけれど。全力で走ると、凄く気持ちが良かった。疲れたら止まれば良い。
嫌な事があると、僕は走った。走ってれば、少なくともその間は嫌な事を忘れられた。疲れて、物事をあまり深く考えられなくなるから。
運動会の徒競走。僕は大好きだった。足速いね、って言われると凄く嬉しかった。けど、大好きな事は誰にも言わなかった。僕はすました子供だったから、物事に熱くなる事を格好悪い事だと思ってた。だから、本当は走るのなんて嫌いだけど、仕方ないから走るというふりをしていた。
中学校に上がってから、走る速度を上げたいと思った。もっと早く走りたいと思った。
イメージを、頭の中で固める。足を動かす理由。手を振る理由。それ等を僕なりに解釈し、理解し、想像する。それを、行動する。それだけで僕のタイムは一秒近く縮まった。嬉しかった。
今日のバイトの帰り道。なんだかモヤモヤした気分だったから、久しぶりに全力で走った。家まで。靴が脱げそうになった。足の裏が痛くて、肺が痛くて、呼吸が全然整わなくて。
だけど凄く、気分が良かった。
こんな風に僕が思うのは、きっと駄目な事なんだろうけど、遊びたい。皆で遊びに行きたい。一人は嫌だ。寂しい。
バイトに行くとそう思うから駄目だ。ずっと家に居れば――誰とも関わらなければ、そんな風に思う事も無い。一人が当たり前になる。そうなってしまえばどれだけ楽か知らない。
だから最近はバイトに行きたくない。誰とも会いたくない。普通に仲が良いから、普通に遊びたくなる。仲が良ければ良いほど、ずっと一緒に居たくなる。悔しくて恥ずかしいから言わんけど。皆がどう思ってるか分からんから言わんけど。気分が沈むんよ。好きな人達に会うのにさ。おかしいなぁ。
明日もバイトだ。どうしよう。いっそ嫌いになれたらいいのになぁ。
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