今日はとても穏やかな一日を過ごした。凄く懐かしい感覚だった。
僕がまだ凄く小さかった頃の事。僕は毎日のように幼馴染の家に電話をして、「今日遊べる?」と聞いたもんだった。電話番号は暗記していた。大抵おばあちゃんが電話に出て、幼馴染に取り次いでもらう感じだった。何度も電話したけど、いつも僕は緊張していた。当時から僕は、電話だとか、友達を誘うだとかが怖かった。今ほどではないけれど。
友達は大抵遊べた。僕より1つ上の男の子だった。けど、先輩後輩といった感情は一切無かった。僕らは純粋に「友達」だった。それが嬉しかった。
遊ぶ時は僕の家で遊ぶ事が多かった。僕から電話をかけているわけだから、相手の家に行くのは、子供の僕でも気が引けたんだろうと思う。一緒にテレビゲームをしたり、漫画を読んだりした。家には誰も居ない事が多かった。夕方になるまで、大抵誰も帰ってこない。だからきっと、幼馴染を誘う事で気を紛らわせていたんだろうと思う。今の僕よりずっと素直で正直だった。
たまに友達の家に呼ばれた。僕も結構な回数電話をしたけれど、相手が僕を誘う事もそれなりにあった。これがまた嬉しくてたまらなかった。
友達の家は歩いて一分もしないぐらいの所にある。広くて綺麗で、玄関を開けると友達の家独特の匂いがした。けど、綺麗な家過ぎて、僕はその友達の家に行くとなんだか落ち着かなかった。家族も皆上流階級なオーラを纏った人たちだった。
母からは「人様の家に行くときは、手土産を持っていけ」と言われていたので、僕は家にあったお菓子を持参して行っていた。もって行かない日もあったけど、誰も僕を責めなかった。「どうして手土産無いの?」なんて言われたりしなかった。当たり前だけれど。
広い部屋、大きいテレビ、新しいテレビゲーム。今思うとまるでスネオみたいな友達だった。三時頃になると、優し気なお母さんがお茶菓子を運んでくれた。ゲームに熱中して夕方を過ぎてしまうと、晩御飯をご馳走してくれた。
辺りが真っ暗になって、チャイムが鳴って。母が迎えに来てくれて。一分もかからんような帰り道を、手を繋いで帰った。「○○君家のご飯美味しかったよ」って言うと、次の日の夜はちょっとだけ、豪華なご飯が出た。
凄く久しぶりに、あの時のなんとも言えん感覚が蘇った。友達の家に行って、遊んで、ご飯をご馳走になって。凄く温かい一日だった。人って温かいなと思った。時間があっという間に過ぎた。あの家族にはずっとずっと、幸せであって欲しいと思った。今後一切、なんの不幸も訪れるなと願う。その分僕が不幸になっても構わないや。ほんと、それぐらい胸が一杯になった。今ならすぐにでも泣ける。
けどやっぱり、友達の家は何歳になっても緊張するや(笑)。
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